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ドキュメント

Botão Exhibition vol.4
Daniel Göttin / ダニエル・ゲティン
「DOUBLE VIEW」
アーティストトーク

吉田|ではダニエルさん、ゲルダさんにお話を伺います。

ゲルダ|CONCEPT SPACEとは形が違いますが、私たちにとっても重要なのは、作家との交流です。誰かが来て作品を作り、展示をしなくてはなりません。そういう現実世界の話です。私とダニエルは30年間ともに歩んできました。1995年に元パン屋さんだった場所を借りました。ここは100年ほど前に建てられて、私たちは作品や作品ではない物も作ったり、住んだり、展覧会をしたり、それら全てをこの場所で行っています。この場所の良いところは、大きな窓が2つあり、夜など外から作品を観ることができることです。私たちはCONCEPT SPACEと同じで、コンセプチャルアートやミニマルアートを中心に考えています。この場所をオープンする前に、ダニエルがアメリカ、テキサスのマーファという街にあるチナティ財団のレジデンスに、半年間参加しました。マーファを私も訪ねたのですが、そこでは作品がギャラリー内だけでなく、外に出て現実世界と関わっている場面をたくさん目の当たりにしました。その時私もスイスに戻ったら作家として、こういうことをやらなくてはいけない、やりたいと思い、1998年にHebel 121を正式にオープンしました。その年私は仕事を辞め、1階の改修をほとんど自分自身で行いました。

ダニエル|私がHebel 121をオープンした理由は、当時私はミュンヘンのギャラリーの作家で、そのギャラリーが日本のギャラリー現と交流を持っていました。そこで作家の交換の話が立ち上がり、私のところに話がきました。当時日本のことは何も知らなかったのですが、ただ「行きたい。」と伝えました。うまく話が進んでいたのですが、ある日突然ミュンヘンのギャラリーが消えてしまい、連絡がつかなくなりました。

ゲルダ|そこでギャラリー現に、「ドイツではなく、スイスにアーティストを連れて来るのはありか。」と聞いたら、それでも良いという話でした。最初にHebel 121で展覧会を行ったのは日本人作家の鈴木隆さんで、ダニエルがギャラリー現で展覧会をやりました。

ダニエル|その経験から、私たちはHebel 121を外の世界の人たちを招き入れる場にしたいと考えました。身近な作家の展覧会をやる場所ということも考えましたが、バーゼルがあまりに小さいまちなので、もっと外から作家を交換で招き入れる活動をしようと決めました。

ゲルダ|販売することが偶然起きることもありますが、コマーシャルギャラリーではないので、それがメインでは決してありません。良い展示をすることが、私たちの第1の目的です。

ダニエル|Hebel 121に招く作家に期待するのは、まずサイトスペシフィックなこの場所でしかできない作品を考えてもらい、実現してもらうことです。このガラス張りの部屋の他にも部屋があるので、そこに展示することもできます。

ゲルダ|私は戦後生まれの作家として、「美術と生活」というものがともにあることが非常に重要だと考えています。美術はそれ自体に対して祈りを捧げるようなものでなく、もっと身近にあるべきものだと考えています。物をただ動かしたり、ただ私たちの身につけたりするのではなく、私たちの中から導き出すもので、作家は自分自身の言語を持つことが仕事だと思います。

ダニエル|私たちの活動では、人と人とのつながりの中で築き上げていくやり方が極めて重要です。

ゲルダ|1年に4回、1回の展覧会を2ヶ月ほど開催します。今日さまざまなことが私たちの周りで起きていて、美術との時間というのは非常に重要です。一定の期間そこに作品があるということが重要で、同じ場所に作品が長くあることで、普段気付かなくても、ある日突然作品から気付くことがあるからです。

ダニエル|第2の目的は世界中の作家を紹介することで、さまざまな国の作家を呼ぶことです。招いた作家とバーゼルの人たちが出会うことが重要だと考えています。
Hebel 121の17年にわたる活動の中で、日本以外にもアメリカやオーストラリア、イギリスからも作家を招いています。次の展覧会は渡辺英司さんと大塚泰子さんの展示を予定していて、これらの記録はWEBサイトで見ることができます。
2015年最後は私たち自身の展覧会を開催し、経済的収入を得るための販売を目的としました。
少ない予算で質の高い展覧会を提供することを心がけています。私は制度的なものが非常に嫌いで、独立していることがとても重要です。美術は自由とともになくてはなりません。また矛盾や真実と向き合わなくてはなりません。それは世界をどう見るか、どう考えるかということです。

質問者|いろんな作家を呼んでいますが、どういうつながりで呼んでいますか。

ダニエル|私たちは作家として世界中で発表しているので、いろいろな人たちに出会います。それがHebel 121で発表する作家を見つけるきっかけになっています。

ゲルダ|人々に出会って、そこで彼らの作品を知り、時には彼らのスタジオまで尋ねることがあって、そこで気に入った作家の作品を発表しています。

ダニエル|作家にとって移動することは非常に重要で、作家としてレジデンスプログラムに参加する場合、たくさんの人と交流することがチャンスになります。旅をして人々に会うことです、まさに今日のこの場のように。
Hebel 121をスタートして以来、他の国で同じようにスペースを運営している作家と出会う機会が増えました。そういった時に彼らと展示を交換をしようという話によくなります。スペースとしての交換だけでなく、作家同士の交流も広がっています。

ゲルダ|私たちはスペースを運営する作家です。それが私たちにとってのベーシックになります。

質問者|作品についてお話していただけますか。

ゲルダ|私はStar Galleryで本に医療用の包帯を巻いた作品を展示しています。本は市販されていますが、4色の包帯で覆うことで本を違う見方で来場者に見てもらおうとしています。美術はただフレームの中に収まっているものでなく、人々を少し挑発させたり、突っついたりするようなものであるべきだと考えています。見慣れたものを包帯で覆い、4色でバランスのとれた構成にして空間に納めることによって、人々は同じ物を違う見方で発見することができます。《Soft Stones》という作品はライン川から持ってきた石を布で包みました。私はローリング・ストーンズの世代であくまでジョークですが、ライン川の石を3つスーツケースに入れてバーゼルから持ってきて、ラッピングして展示しました。

渡辺|今回、愛知県常滑市に行きましたが、ゲルダさんは常滑からも石を2つ持ち帰っていました。

ダニエル|私はBotão Galleryが2階建てであることをユニークだと思い、渡辺さんに空間の写真を送っていただいて、ドローイングをしてプランを考えました。私の作品は、通常場所を知る、理解することが重要です。展覧会は今この場でのみ存在し、終われば消えてなくなってしまいます。この展覧会の要素として、日本の畳や障子などのフレームのイメージが反映されていて、比率や空間、プロポーションの問題についての議論が作品の重要な要素です。人間が空間をどのように受容するか、どのように把握するかということです。
2階建ての展示についても1階と2階で別々の考えではなく、両階とも同じ考えで成立しています。空間が今どういう状態かを読み解き、空間にアプローチすることと、上の空間で見たものが下の空間にどのように反映するか、下の空間で見たものが上の空間へ行った時にどのように反映するかということも考えています。
「DOUBLE VIEW」という展覧会タイトルは、建物、空間を受容する視線と建物に対して投影する視線、例えばその場所から見渡せるスペースもしくはイメージと、そのスペースから見通すことのできるイメージの2つのことです。場所を全体として把握することができるテープのフレームのような作品があれば、その中にカードボードの作品もあります。それは平面の空間の中を把握するスペースになります。そうした2種類のものの見方があの空間の中で一緒になっています。そういう意味での「DOUBLE VIEW」です。また素材はホームセンターなどどこでも手に入るような素材で、誰にでもできる、試せるやり方です。
つまりアートはシリアスであり得ると同時に、人間はおかしみを持つべきだという2つの考え方があると言えるでしょう。

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プロフィール
ダニエル・ゲティン
Daniel Göttin

アーティスト。1959年スイス・バーゼル生まれ、同地在住。
シンプルな材料によってできる直線を用いたミニマムなインスタレーション作品を展開している。
これまでスイスなどヨーロッパ各国をはじめアメリカ、オーストラリアなどで作品を発表し、1997年以降日本でも個展、グループ展を開催。
2016年9月から開催されるさいたまトリエンナーレへの出展も控えている。
また同じくアーティストのゲルダ・メイズとともに、ギャラリー「Hebel 121」(バーゼル)を運営している。
http://www.danielgoettin.ch/

《DOUBLE VIEW》コンセプト ドローイング


ゲルダ・メイズ
Gerda Maise

アーティスト
1947年スイス・バーゼル生まれ、同地在住。身近な素材を使ってミニマルでコセンプチュアルな作品を制作。ヨーロッパを中心に作品を発表、近年では日本でも作品を発表している。また「美術と生活」がともにあることを重要視し、教育現場や展覧会企画にも携わっている。1998年より自宅兼ギャラリー「Hebel 121」(バーゼル)をダニエル・ゲティンと運営。
http://www.hebel121.org


福田篤夫
Atsuo Fukuda

彫刻家
1958年北海道生まれ、群馬県在住。日本で伝統的に使われてきた素材や技法を用い「日本美術の独自性」について彫刻作品を制作し考察している。また1982年より群馬県渋川にて「住まうこと、制作すること、展示すること、企画すること」をコンセプトに長屋を改装したギャラリー「コンセプトスペース」を運営。国内外のミニマルアート、コンセプチュアルアートの作品を中心に発表を行っている。
http://www.conceptspace.jp


開催日|2016年1月16日(土)17:00–18:00
会場|Minatomachi POTLUCK BUILDING 1F: Lounge Space
スピーカー|ダニエル・ゲティン、ゲルダ・メイズ
ゲスト|福田篤夫
来場者|22人