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Minatomachi POTLUCK BUILDING 3F:Exhibition Spaceでは、MAT Exhibition vol.4「ほったまるびより-O JUNと吉開菜央」を開催します。
本展はゲストキュレーターに愛知県美術館館長・島敦彦を招き、共同で展覧会をつくる試みです。
島は1980年代よりこれまで、同時代のあらゆる表現を目撃しながら、記憶に残る重要な展覧会を美術館の中で企画してきました。今回は美術館の外をフィールドにし、”まち”とより繋がりの近い場所で行う展覧会です。
日々の暮らしがたんたんと繰り返される港まちで、O JUNの「絵」と吉開菜央の「映像」、それに島の「視点」が、どのように混ざり合い、立ち現れてくるのか、期待が高まります。
ほったまるびより-O JUNと吉開菜央 Part2はこちらから
O JUN、吉開菜央
島 敦彦
『ほったまるびより』は、吉開菜央の作品名である。放っておくと溜まるものに日和が合体した奇妙な造語だが、その響きがとてもよく、O JUNの平板で官能的な絵にもふさわしい気がした。共通の題名とした所以である。放っておくと溜まるものとは、髪の毛、爪、皮膚、体臭など人間の体に即物的に関わるものもあれば、悲しみや怒りの感情、心理的負担など溜めすぎるとやっかいなものもある。絵描きが溜めるのは、日々描かれるドローイングかもしれない。絵になる半歩手前あたりで、思いがけず立ち現われるドローイングの数々、手に余るものもあれば、目に余るものもあるだろう。その振幅が広く許されるのがドローイングの魅力であり、面白さである。
O JUNと吉開菜央、二人は今回初めて出会う。O JUNのドローイングと吉開菜央の映像《ほったまるびより》(2014年、カラー、38分)は、はたして共鳴するのか、融合するのか、はたまた反発や齟齬をきたすのか。
ともあれ、紙に鉛筆やクレヨン、グワッシュなどで描かれるO JUNのドローイングは、彼の心のアンテナに触れるあらゆる事象から引き出されるイメージの変幻自在ぶりをあらためて示すに違いない。O JUNの引き出し(drawer)の多彩さとその取りつく島のないぺしゃんこな平面に、誰もが翻弄されることだろう。一方、映像作家でダンサーでもある吉開菜央の近年の代表作《ほったまるびより》では、平屋の古民家で繰り広げられる少女たちの踊りと仕草、部分を鋭く切り取る映像の妙に魅せられる。特異なダンス映画としても楽しめるし、こすれ合って増幅する音声の展開も聞き逃せない。透明感のある映像だが、匂いと湿り気、さらには不穏な空気も感じさせる。世代も表現媒体も異なる二人だが、予期せぬ接点が見つかるかもしれない。
会場|Minatomachi POTLUCK BUILDING
参加|無料(予約不要)
2016年7日8日(金)19:00–
吉開菜央によるオープニングパフォーマンス
2016年7月9日(土)14:00–
O JUN、吉開菜央によるアーティストトーク
聞き手|島 敦彦
画家・東京藝術大学美術学部絵画科教授 1956年東京都生まれ、東京都在住。 1982年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修士修了後、スペイン、ドイツに遊学。 日常でよく目にするような人物や風景などの具体的なモチーフを、鉛筆やクレヨン、グアッシュを使い絵画作品や版画、ドローイングを制作するほか、パフォーマンスなどの身体表現も行っている。 主な展覧会に「O JUN」展(国立国際美術館、大阪、2002年)「O JUN MALT GOTT」(Gallery Clemens Thimme、ドイツ、2011年)、「O JUN-描く児」(府中市美術館、東京、2013年)、「MOT コレクション展:残像から」(東京都現代美術館、2013 年)、「O JUN展 まんまんちゃん、あん」(国際芸術センター青森、2016年)など。国内外で作品を発表している。
ダンサー・映像作家 1987年山口県生まれ、山口県在住。 日本女子体育大学舞踊学専攻でダンスを学んだのち、東京藝術大学大学院映像研究科に進学。ぞくっとする感覚を素材に、見ること、聞くことの結晶である映像に落とし込み、作品を制作している。主な上映歴・賞歴に、《みづくろい》(YCAM架空の映画音楽の為の映像コンペティション、優秀賞受賞、山口、2013年)、《自転車乗りの少女》(那須国際短編映画祭観光部門出品、じゃらん賞受賞、栃木、2013年)、《I want to go out》(秋吉台国際芸術村レジデンスサポートプログラム参加、山口、2014年)など。2015年には、監督した自主映画『ほったまるびより』が文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞を受賞。同作はパフォーマンスと特殊効果を使った踊る映画の上演作品としても劇場やライブハウスで発表された。台湾、韓国、日本などアジア各国でも上演され、好評を博す。naoyoshigai.com
愛知県美術館館長 1956年富山県生まれ、愛知県在住。 早稲田大学理工学部金属工学科卒業後、富山県立近代美術館(1980–1991年)、国立国際美術館(1992–2015年)を経て、2015年より現職。国立国際美術館での主な展覧会に「内藤 礼」(1995年)、「瀧口修造とその周辺」(1998年)、「小林孝亘」(2000年)、「安斎重男の眼1970–1999」(2000年)、「O JUN」(2002年)、「畠山直哉」(2002年)、「オノデラユキ」(2005年)、「絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から」(2010年)、「あなたの肖像-工藤哲巳回顧展」(2013–14年)などがある。