プロジェクト
港まちポットラックビルでは、昨年好評を博した「パンク!日常生活の革命 名古屋」展に続き、これからの「コミュニティ」や「民主主義」のあり方について考える展覧会「ベッドタイム・フォー・デモクラシー」展を開催します。
複雑化や不均衡が問題視される現代社会で、どのような意思決定のプロセスを経てコミュニティを形成するのか、まちづくりにおいても住民の参加型の対話やその過程が問われています。
2022年に岡山、東京を巡回した本展覧会は、アーティストによる作品やパフォーマンスの記録、ジャーナリストや哲学者の活動のドキュメント、資料など、1950年代から現在までの映像を中心に構成されます。会期中にはゲストを招いたトークなど、イベントも開催予定です。
私たちのこれからの社会がどのように希望あるものになり得るのか、展覧会を通して考えます。
アメリカのパンクロックバンド、デッドケネディーズは、アルバム『ベッドタイム・フォー・デモクラシー』のなかで「電気フェンスが必要な“祖国 ” と呼ばれる収容所」や「バビロンの蜃気楼やベルトコンベアのような肉弾戦を生きている」と叫び、民主主義と資本主義の分かち難い共犯性を歌いました。
本展に付けられたそのアルバムタイトルは、ロナルド・レーガンが主演した1951年のコメディ映画『Bedtime for Bonzo』に由来しており、レーガノミクスをはじめとして、新自由主義、戦争、メディアの氾濫、娯楽産業(余暇と消費)、マッチョイズム、そしてそれらに対する見せかけの反抗への糾弾が叫ばれます。また難民やクィアへの擁護といった、周縁への配慮も示唆します。
これらの観点を踏まえつつ10組のアーティスト、活動家、哲学者が参加する本展では、民主主義における意思決定プロセスが問いただされる現状の中、その声をかき消され、疎外された周縁の声を引照し、民主主義の政治的神話の綻びを暗示した作品群を取り上げます。また地政学的な観点から、民衆の不服従を起点とした集団の内部における権力の分散や、共有を照射した作品をとりあげ、新自由主義の諸原理が民主から奪い去った主権を、いかにして奪還できるのかを模索します。そして民主主義をどのように抵抗の政治へと変転しえるかを、作品を通して見いだします。
・レティシア・アグド|Leticia Agudo(アイルランド)
・ヌオタマ・ボドモ|Nuotama Bodomo(ガーナ)
・リジー・ボーデン|Lizzie Borden
(アメリカ)
・ブレッド&パペットシアター|Bread and Puppet Theater(アメリカ)
・ナオミ・クライン|Naomi Klein(カナダ)
・マーサ・ロスラー|Martha Rosler
(アメリカ)
・ヘイニー・スロール|Heiny Srour(レバノン)
・松本俊夫|Toshio Matsumoto
(愛知・名古屋)
・ウィンストン・スミス|Winston Smith(アメリカ)
・ウェンディ・ブラウン|Wendy Brown(アメリカ)
*最新情報については、ウェブサイト・SNSでお知らせします。
本展で展示中のナオミ・クラインによる路上パフォーマンス《ウォール街を占領せよ》は、金融危機をきっかけとして1%の富裕層と残り99%の人びととの階級格差を表したデヴィッド・グレーバーが名付けたスローガン「われわれは99%である」を人間マイクによりアクションした記録です。同じ目的をともにしつつも異なる政治的志向の⺠衆が集い、平等な合意形成にもとづく、水平的な運動の様子が見受けられます。
会期中のイベントとして、今回はアーティストやその場に居合わせた参加者がお茶を飲んだり、手芸や対話をしながら、場と時間をともにするテーブルを用意します。「より良い社会への転換」や「持続可能なコミュニティのあり方」について、手を動かしコミュニケーションを取りながら、自分たちでできる小さなアクションとは何か?を考えます。手ぶらで、どなたでも気軽にご参加ください。
日時|11月25日(土)13:30-16:00
会場|Minatomachi POTLUCK BUILDING 2F: Project Space
参加費|無料(予約不要、時間内の出入り自由)
参加アーティスト|碓井ゆい、横内賢太郎、港まち手芸部(宮田明日鹿、おがわまき、喜岡淳子)ほか
入場|無料 定員|各回50名(予約不要) 聞き手|川上幸之介
vol.06|12月22日(金)19:00–20:30
「この世界に疲れた人たちのための政治論――芸術と学問の連帯に向けて」
藤原辰史(京都大学人文科学研究所准教授/農業史研究者)
vol.07|12月23日(土)15:00–16:30
「民主主義・資本主義・ケア」
岡野八代(同志社大学教授/政治学者)
倉敷芸術科学大学准教授/EEEプロジェクト主催/本展キュレーター
主なキュレーションに「1923」「The Third Entity」「ラディカルデモクラシー」「Punk! The Revolution of Everyday Life」「Bedtime for Democracy」「Reinventing the “F” word: feminism!」ほか。教育プロジェクトでは、ジョン・バルデッサリ、イム・ミヌク、アントン・ヴィドクル、ホー・ルイ・アン、ジェレミー・デラー、ナイーム・モハイエメンなどと協働。
アーティスト
1980年東京都生まれ、埼玉県在住。
社会で見過ごされてきたできごとや歴史を綿密なリサーチによって掘り下げ、身近な素材や手法を用いて彫刻や絵画、インスタレーション作品を制作。アッセンブリッジ・ナゴヤ2016では、女性の社会的地位や賃金の発生しない労働について、刺繍やオーガンジーによる愛らしい手仕事により言及した作品シリーズ「shadow work」を旧・名古屋税関港寮で発表した。
2018年より「港まちの女性と労働」についてリサーチを始め、1972年に港保育園で保育者や園児の環境を守るために起こった運動「自主管理闘争」をきっかけに、「保育」に関するインタビューや資料収集を実施。当時から現在までの「保育」をテーマにした新作を発表する。
Web|yuiusui.com
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員。
専門は、西洋政治思想、フェミニズム理論。
主な著書に「フェミニズムの政治学-ケアの倫理をグローバル社会へ」(みすず書房)、「戦争に抗する-ケアの倫理と平和の構想」(岩波書店)、訳書にケア・コレクティブ「ケア宣言-相互依存の政治へ」(共訳、大月書店)、ジョアン・C・トロント「ケアするのは誰か?-新しい民主主義のかたちへ」(訳・著、白澤社)。
『Bedtime for Democracy』展カタログでは、ウェンディ・ブラウン『自由民主主義の終焉と新自由主義』の監訳をつとめた。
1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。
専門は農業史、食の思想史。生態系の中に組み込まれた人間の在り方から、現代史を再構築する試みを続けている。また、新聞・雑誌のコラムの連載や、「パンデミックを生きる指針」(B面の岩波新書、2020年)や『中学生からわかるウクライナのこと』(ミシマ社、2021年)など時事問題にも積極的に発言をしている。『分解の哲学』(青土社、2019年)でサントリー学芸賞、『給食の歴史』(岩波新書、2018年)で辻静雄食文化賞、『ナチスのキッチン』(共和国、2016年)で河合隼雄学芸賞、また、ナチスの食研究全般に対して日本学術振興会賞を受賞。他にも、『食べること考えること』『食べることとはどういうことか』『植物考』など多数。
2017年よりアーティスト・宮田明日鹿が名古屋港エリアで立ち上げ、企画運営しているコミュニティ活動。
手芸文化を通して、ものづくりや創作の楽しさを味わう場所や関係性をつくった。
インスタグラム|@minato_shugei
アーティスト
1979年千葉県生まれ、岐阜県在住。
光沢のあるサテン布に染料やメディウムなどにより滲みのある独特な画面を作り、東洋に対する西洋の関係性あるいは、交わりをあらわにする作品を制作。2014年よりインドネシアに移住し、作品制作と並行し自宅を改装したアートスペース「Artist Support Project」をジョグジャカルタで開始、帰国後も継続して運営を行う。2020年オランダでアーティスト・イン・レジデンスを経て、2021年に帰国。
主な展覧会に、「誰もに何かが / Something for Everyone」(京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA、京都、2020年)、「Indigo Phase」(puntWG、アムステルダム、2020年)、「横内賢太郎 CONTACT」(愛知県美術館コレクション展示室、愛知、2020年)など。主なパブリックコレクションに岡崎市美術博物館、東京都現代美術館、豊田市美術館、高松市美術館などがある。
Web|kentaroyokouchi.com