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MAT Exhibition vol.12
長島有里枝「ケアの学校」


Minatomachi POTLUCK BUILDINGでは、アーティスト・長島有里枝と「ケア」について学びあうプロジェクトを行います。長島はこれまで写真やインスタレーション、文章などの作品を通して、社会における周縁化されがちな人びとや事象をテーマに、フェミニズム的な視座から創作を行ってきました。本プロジェクトでは長島が港まちに滞在し、会場を自身のスタジオとして公開します。会期中、デビュー当時から取り組んでいる「セルフポートレート」の概念を通底させながら、これまでの表現に加え、パフォーマンスなど新たな手法にも向き合います。また地域の人や来場者とともに、時間や場所を共有し、対話や交流を重ねることで、さまざまな出来事をつくりながら、他者と自身のための「ケア」について考え、実践します。

 本プロジェクトの会期中に、50歳を迎えます。デビュー以来30年、社会に対する個人的な思いや、自分にとって切実な問題を起点とした作品を制作してきました。途中でフェミニズムに出会い、そうした行動がThe personal is political(個人的なことは政治的なこと)という実践になりうると知りました。
 10代の頃、自分にはなんの価値もないと感じていました。わたしのしんどさや怒りなんて取るに足りないもの。誰かに話して聞かせたり、声に出したりすることは迷惑だと決めつけ、自分の殻に閉じ篭りました。思い詰め、心と身体のバランスを崩したとき、たまたま美大生だったのは運が良かった。表現することを学ぶ過程で、それまで押し殺し、無かったことにしていた感情を解放しない限り、この先を生き延びることは難しいと気づくことができ、アートを通じて方法を探り、実践することができたからです。

 子供の頃はとてもゆっくりだった時間の経過がいま、ものすごい速さに感じられます。世界も同じく、ものすごい速さで変化し続けているように見える——昨日まで正しかったことが今日は間違いで、さっき習得した技術もすでに廃れている、という具合に。そんな「いま」を、若いころと変わらぬおぼつかなさで、更年期を迎えた中年としてわたしは生きています。フェミニズムを勉強して強くなったり、生き易くなったりすることはなく、「先生」と呼ばれても人より特別なにかに秀でているわけでも、確固たる自信があるわけでもありません。

 そんなわたしが、ホームタウンから遠く離れた名古屋でできることはなんでしょうか。新型コロナウイルスの世界的流行の渦中にあって、ある人々は手を繋いで解決に向かうことよりも戦争で人のものを奪ったり、嘘を流布して差別や対立を深刻化させたり、経済を優先させて地球環境や命を蔑ろにしたりすることを選び続けています。生身の人と触れ合う機会は減っているのに、大きな物語はiPhoneやPCの小さな画面を介して、わたしたちの生活に大量に流れ込んできます。でも、そうじゃない人が、そうじゃない物語をどこかで生きてもいるのです。

 2020年に姉と慕っていた人、2021年には娘と思っていた犬のパンクを亡くしました。生きているものはいつか死ぬ、という当たり前のことを受け止めるのが、こんなに辛いなんて。新型コロナウイルスだけが、人の命を奪うわけではありません。別離を経て感じたことは、いまだにこれといった言葉にできずにいます。2022年2月、パンちゃんの写真を持って美容室に行き、髪をパンちゃんの体毛と同じ色にしました。
 すごく大切なものを失うと、自分の望みや生きる意味がもともとはとてもシンプルだったことに思い至ります。わたしの場合はずっと、ただ楽しく生きたいだけでした。好きな場所で、好きなとき、好きなことができればよかったのです。幸せな気持ちで眠りに就き、新しい朝を迎える。最後の日までそうやって、自分も、自分を大切にしてくれる人や世界も大好きだと思いながら生きたい。そんな小さな望みを叶えることが、なぜこうも難しく感じられるのか。考えると悲しくなる。だからなんとかしたくて自分はアーチストになった、そんなことも思い出します。
 暗室作業、編みもの、お絵描き、子供の世話、読書会、お菓子作り、ダンスや歌の練習。ずっとずっと大好きだったことをしながら、その場に居合わせた人と「ケア」について考えてみたい。ケアとは誰かを気にかけること。誰かとはなにより自分自身のこと。わからないことはわからないままでいいし、感情や身体のコンディションが整わないなら休んでもいい。相手との距離を縮めることだけを目指すのではなく、遠いまま放っておくことも大切な気がする。なにかに没頭する時間が、自分を労わる。没頭するわたしの隣に没頭するあなたがいる。他愛もないことや、真面目なことをお喋りしながら過ごす時間はきっと、未来の世界そのものを「制作」する力を持つはずです。

長島有里枝

長島有里枝「ケアの学校」
開催日
2023年1月14日(土)–3月18日(土)
時 間
11:00–19:00(入場は閉館30分前まで)
会 場
Minatomachi POTLUCK BUILDING 3F : Exhibition Space
休館日
日曜・月曜・祝日 *2月11日(土・祝)は開館
料 金
無料
企 画
Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya](青田真也、吉田有里)
主 催
港まちづくり協議会
協 力
名古屋学芸大学、名古屋芸術大学、MAHO KUBOTA GALLERY

助成  公益財団法人 福武財団、公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 朝日新聞文化財団

イベント

トークや発表会、読書会、フリーマーケット、お茶会など、長島さんが「ケアの学校」にあわせて、ゲストの方々をお招きし、さまざまなイベントを開催します。

*ご予約や参加費が必要な場合があります。
*イベントの詳細、その他最新情報については、MAT, NagoyaのWEBやSNS、「ケアの学校」Instagramアカウント(@yurienagashima_school_of_care)に漸次更新します。
「ケアの学校」のアカウントでは長島さんによる投稿もご覧いただけます。

イベントカレンダーはこちら

長島有里枝「フリーマーケット」
1月14日(土)終了
2月11日(土)

「トーク|女性作家の自伝の読者は誰なのか?」終了

著書『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』の刊行を記念し、名古屋大学教授で、日本近現代文学・ジェンダー批評の専門家である飯田祐子氏とトークイベントを開催します。二人の母と共働した二つの作品の制作過程を綴った日記から、フェミニズム、女性文学、母と娘の関係について考えます。

日時|2023年1月14日(土)19:00-20:30(受付は18:30-)
会場|港まちポットラックビル
料金|500円(お茶付き)学生200円 *学生証のご提示をお願いします。
定員|先着50名→要予約予約はこちら)終了
ゲスト|飯田祐子(名古屋大学教授/日本近現代文学、ジェンダー批評)

ケルベロス・セオリー「読書会」

フェミニズムを参照しながら制作するアーティストコレクティブ・ケルベロス・セオリーによるフェミニズムを知って考えて話す読書会。

[Part1]終了
日時|1月24日(火)19:00–20:30
会場|港まちポットラックビル3F
定員|10名(要予約→予約はgoogleフォームから)
料金|無料
イベント詳細はこちら

柿崎麻莉子「パーソナルダンス」

ダンサー/振付家として活動する柿崎麻莉子さんが、参加者の選曲にあわせ、即興でその人にダンスを贈るパフォーマンス「パーソナルダンス」を行います。ダンスは表現でもあり、コミュニケーションであると語る柿崎さんと、「ケアの学校」でバレエレッスンの場を開放する長島との共同企画として、身体表現による対話を試みるイベントです。

日時|2023年2月10日(金)18:00–20:00
会場|港まちポットラックビル
料金|無料
定員|パーソナルダンス参加者10名(要申込・先着順→申込はこちら)、鑑賞席20席(申込不要)
出演|柿崎麻莉子(ダンサー/振付家)

【「パーソナルダンス」参加について】
参加者は柿崎さんに踊ってほしい曲を選曲することができます。その曲にあわせて、柿崎さんが自由にパフォーマンスを行います。参加者は一緒にダンスに参加する、自分のためだけのダンスを特別席にて鑑賞する、お子さん連れでの参加など、自由に参加いただけます。(要申込・先着順)

*その他、鑑賞だけの席もご用意します(申込不要)

長島有里枝×NUCO×パルス「イベント」

日時|2月24日(金)
*イベントの詳細は、MAT, Nagoyaのウェブサイト、SNSで更新します。

長島有里枝×井出幸亮「イベント」

日時|2月25日(土)
*イベントの詳細は、MAT, Nagoyaのウェブサイト、SNSで更新します。

長島有里枝×西川 潤「イベント」

日時|3月4日(土)
*イベントの詳細は、MAT, Nagoyaのウェブサイト、SNSで更新します。

長島有里枝×ホンマタカシ「発表会」

日時|3月11日(土)19:30–
ゲスト|ホンマタカシ(写真家)
*イベントの詳細は、MAT, Nagoyaのウェブサイト、SNSで更新します。

展覧会Instagramについて

展覧会の情報を下記のInstagramページで公開しています。
「ケアの学校」のアカウントでは長島さんによる投稿もご覧いただけます。
長島有里枝「ケアの学校」 Instagram

ご案内

●イベントによっては、ご予約や参加費が必要な場合があります。
●プロジェクトやイベントの詳細、その他最新情報などについては、MAT, Nagoyaのウェブサイト内で漸次更新しますので、ご確認ください。
●会期中、アーティストが不在の日や時間帯があります。

誰もが安心して入場できるスペースを目指しています。以下に該当する方は、会場への入場をお断りします。
 ・37.5度以上の発熱や、その他体調の優れない症状のある方
 ・特別な事情なく、会場内でマスクを常時着用いただけない方
 ・周囲の迷惑となる行動をとる方(*会場でお声掛けする場合があります。)

*新型コロナウイルスの感染状況によっては、変更や中止の可能性があります。最新情報については、ウェブサイト・SNSでお知らせします。

関連リンク
プロフィール
長島有里枝
Yurie Nagashima

1973年東京都生まれ。
カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修士課程修了。武蔵大学人文科学研究科博士前期課程修了。現在、東京都を拠点に活動。
社会で周縁化されがちな人びとや事象に、フェミニズム的視座から注目した作品を多く制作している。近年は写真だけでなく立体作品、映像、文章の執筆など、表現ジャンルを超えた活動を行っている。
主な展覧会に、DOMANI plus @愛知「まなざしのありか」Minatomachi POTLUCK BUILDING 3F: Exhibition Space、愛知(2022)、個展「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」横浜市民ギャラリーあざみ野、神奈川(2018)、個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」東京都写真美術館(2017)など。出版歴に、 『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』大福書林(2020)、『Self-Portraits』Dashwood Books(2020)など。受賞歴に、第26回木村伊兵衛賞(2001)、2022年日本写真協会学芸賞など。展覧会「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」金沢21世紀美術館、石川(2021)では、ゲストキュレーターをつとめた。
yurienagashima.com

縫うこと、着ること、語ること。
撮影|大塚敬太+稲口俊太


飯田祐子
Yuko Iida

名古屋大学教授/日本近現代文学、ジェンダー批評
1966年、愛知県生まれ。日本近現代文学・文化を対象として、ジェンダー分析を行っている。最近の研究テーマは、出産や育児やケアなどの再生産領域の描かれ方、東アジアの女性雑誌の比較研究、左翼文学・文化のジェンダー分析など。単著に『彼らの物語 日本近代文学とジェンダー』(名古屋大学出版会、1998)、『彼女たちの文学 語りにくさと読まれること』(名古屋大学出版会、2017)、近刊に、編著『プロレタリア文学とジェンダー 階級・ナラティブ・インターセクショナリティ』(青弓社、2022)がある。


井出幸亮
Kosuke Ide

編集者
1975年、大阪府生まれ。
古今東西のアーツ&クラフツを扱う雑誌『Subsequence』(cubism inc.)編集長。雑誌『POPEYE』(マガジンハウス)、『工芸青花』(新潮社)他さまざまな媒体で編集・執筆活動中。主な編集仕事に『ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと』(新潮社、2013)、『ズームイン! 服』(坂口恭平著/マガジンハウス、2015)、『細野観光 1969-2019 細野晴臣デビュー50周年記念展オフィシャルカタログ』(朝日新聞社、2019)など。雑誌『POPEYE』で10年間続いた執筆連載をまとめた『本と映画の終わらない話』(マガジンハウス、2022)が発売中。


柿崎麻莉子
Mariko Kakizaki

ダンサー/振付家/元新体操選手
2012-2014年Batsheva Ensemble Dance Company(イスラエル)、2014-2020年L-E-V Sharon Eyal|Gai Behar に所属し、世界各国で公演・WS指導を行う。第14回日本ダンスフォーラム賞(2020)、第15回日本ダンスフォーラム賞(2021)をはじめ、国内外で受賞多数。帰国後2021年にカルチャーセンター「beq」を熊本にオープンし、文化や芸術をカジュアルに楽しめる場づくりに励んでいる。Gaga指導者。
https://mari-kaki.amebaownd.com

柿崎麻莉子  写真|長島有里枝


ケルベロス・セオリー
Cerberus Theory

ケルベロス・セオリーはフェミニズムを参照しながら制作するアーティストのコレクティブである。展示空間において誰もが差別的な経験に遭うことのないセーファースペースであることを実践しながら活動している。2021年は名古屋市内にあるspazio ritaにて、Moche Le Cendrillon、山もといとみ、YOUYOUの3名で展示を行った。(12月8日–22日)
Instagram|@cerberus_theory
POTLUCK WALL vol.05|https://www.mat-nagoya.jp/exhibition/9658.html

POTLUCK WALL vol.05展示風景 2022


ホンマタカシ
Takashi Homma

写真家/長島有里枝の友人
1962年、東京都生まれ。
Instagram|@seeing_itself