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MAT Exhibition vol.2
「絵画の何か」
レポート|佐藤克久

「絵画の何か」からのはじまり

私はコミッティーとしてMAT, Nagoyaの立ち上げ段階から関わり、アートとこの地域の関連について考えてきました。絵描きが多い地域的特徴から地元にゆかりのある作家を選び、また私が制作者として美術を続ける中からみつかった課題や危機感などを根底に、MAT Exhibition vol.2「絵画の何か」という絵画の展覧会を企画しました。
絵画を軸に継続して開催することを前提に、第一回目は「何か=次元」と仮定し、素材や技法や思考の制約を軽々と飛び越えて、二次元である絵画と三次元である立体に並行して取り組む4名の作家、川角岳大・小島章義・堀 至以・守本奈央に参加を依頼しました。
小島のキャンバスによる立体作品は、古典絵画などの象徴的なモチーフをモダニズム的絵画に変換し、絵画的課題を並列に接続し自分の問題として引き受けることで静かな強度を持って立ち上がっていました。
堀の絵画は制作における選択の局面を、レイヤー構造として定着し可視化することで豊かな画面となり、頭で理解する前に目が喜ぶという、良い画面の条件を備えていました。小さな立体も同じ構造で堀の手遊び的な制作過程を追体験できました。
守本の作品は「根拠のない良さ」を目指して制作しており、説明から逃れてどこにも着地しようとしないそれらは、名付けられないモノとして常に「何か」を思考し続けているようでした。
川角は、会期中に作品の構造自体を変化させることにより、展示空間も変容させ時間軸を導入するという画期的な展開をしました。この事件のような出来事を自然に受け入れた今展は、四次元すら絵画の許容範囲にし、私が課題にしていた現状の危機感(閉塞感)をものともせず、まだまだ絵画は可能性に満ちていることを示してくれました。
展覧会と並行して、同時代を生きる作家や研究者とともに「絵画」について対話するトークシリーズ「絵画の夕べ」も実施し、制作や絵画そのものについて個別の事例を明らかにすることによって具体的にみえてくる課題の共有を目指しました。
「絵画を続けていくこと」(田島秀彦・山田純嗣・笠木日南子)では日々の制作と生活の金銭も含めたやりくりや世代間の共通認識について、「種明かしと方法」(花木彰太・前川祐一郎・天野一夫)では自身の制作や作品について影響を受けたものや自作の転機について、「絵画のこれから」(川角岳大・小島章義・堀 至以・守本奈央・島 敦彦)では美術状況の閉塞感を危機感としてとらえその打開策について「根拠のない良さ」などをキーワードにし討論しました。回を重ねるごとに聴衆が増え、改めてこの地域の絵画に対する関心の高さも浮き彫りにしました。
この機会を起点に、各参加者が別のトークイベントを開催したり、結論の出なかった問題に展覧会ステイトメント上で応答するなど、論点は確実に引き継がれており、絵画について各々が改めて考える契機になったと思います。

プロフィール
佐藤克久
Katsuhisa Sato

美術家
1973年広島県生まれ。
愛知県在住。活動当初は概念的な立体や写真作品を発表していたが、近年は絵画形式を中心に制作している。
主な展覧会に「反重力」(豊田市美術館、愛知、2013年)、「リアル・ジャパネスク」(国立国際美術館、大阪、2012年)などがある。MAT, Nagoyaのコミッティーメンバーも務める。
satokatsuhisa.jimdo.com

《ものだね》2015